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風のような、ふわりと柔らかい温もりに包まれた。
虹色の光は消えても視界はぼやけ、狼狽える将軍達の声だけが聞こえた。
右手が腰に下り、左手で背後を探る。
「アダル……」
耳元で囁かれた自分の名前。
霞む目が大きく見開かれる。
視力が徐々に回復し、緑の森の情景が断続して瞳に飛び込んでくる。
暴れ回る鼓動を、思い切り叫んで外に解放したい。
「ルーエ……」
だが夢から覚めるのを恐れ、発した声はとても小さかった。
「アダル……」
耳朶を撫でる熱い吐息は夢ではない。
アダルウォルフは自分の腰にしっかりと巻き付く温もりに手を添えた儘、背後を振り返った。
まだ目がぼやけているのか。
それとも夢なのか。
半開きの唇に、いきなり熱が飛び込んできた。
「あ……」
息が止まりそうな抱擁と口付け。
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