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アダルウォルフは納得した。
何故、一目で恋に落ちたのか。
何故、ルーエを美しいと感じたのか。
氷の肉体の奥で揺れる、清らかなスノードロップの蕾を見たからだ、と。
「僕は確かに溶けた。残ったのは一輪の花。アダルの涙で花開く事が出来たんだ」
アダルウォルフはルーエの頬に唇を寄せた。
いつの間にか、将軍達の姿は消えていた。
いや、注視すると木の後ろに人影はあった。
啜り泣く声は空耳か。
蕾は開き花が咲いた。
花が散ってもしっかりと結ばれて出来た実は、簡単には解けない。
二人は手を繋ぎ、暖かい陽射しの元へ駆け出した。
ロイトブルクに、本当の春が訪れた。
Fin
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