噛み締める

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 暖気と寒気の狭間で湿ったガラス越しに眺める景色は、全てが純白で埋め尽くされている。  高木の枝が重たげに撓り、やがて堪えきれず地に白雪を返すばかりだ。  だが王の住まう城の屋根は鉄格子のように悉く尖り、雪を全く寄せ付けていない。  その攻撃的な外観には優美さもあるが、並ぶ尖塔は黒い森を思わせた。  蒼白い月は雪に味方して雪原を照らしている。  嘗ては豊潤な地に吹く爽やかな風が数多の花や草木と戯れ、生き物達の躍動があった。  それが半年以上降り止まぬ豪雪で、国ごと凍死し掛けている有り様だ。  お陰で暖炉の火だけでは足りず、我が身の内の熱量が増し、炎を放出させる術を身に付けるようになっていった。  クリスタルグラスに鋭い眼差しを落とす。 「やはり、熱で溶ける……」  部屋に溢れる熱気と火酒によって、頑ななまでに形を保っていた氷は溶けて小さくなっていた。  今この国を襲う降雪が天の仕業であるなら、かよわい人の子としては甘受する他無いが──  
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