噛み締める

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「王の行く手を何人たりとも塞ぐまじ!!全ての者は王の前に平伏(ひれふ)すべし!! 」  騎士達が赤髪を追いながら猛々しく唱和する。  軽快なヒールの音に続き、右、左と軍靴が荒々しく石畳を叩く。    アダルウォルフの長い足が、三鈷の金工象嵌が施された黒く厳めしい扉の前でピタリと止まった。  一人の騎士が素早く前に進み出て、扉を左右に開く。  オレンジ色の光が、鋭角なブーツの爪先に射し、背後の騎士達を丸く照らしていく。  アダルウォルフが進むのは謁見、パーティー等に用いられる大広間だ。  豪奢なシャンデリアが高い天井から吊られ、その蝋燭の炎が下に置かれた巨大な黒檀製テーブルを浮かび上がらせていた。  テーブルを楕円に囲むボルドー色革張り椅子に着座していた男達は、アダルウォルフの入室と共に一斉に立ち上がった。  顎は床と水平に、揃いのコートは漆黒の鞣し革、金の肩章、光沢のある革手袋には旗章の三鈷の刺繍。  太股にピタリと沿わせた指は左右共に床を真っ直ぐ指している。  何れも選び抜かれた美麗な男達であり、騎士を率いる将軍という地位にあった。  
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