噛み締める

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 服の下に針金を仕込んだような直線的な動きで将軍達は椅子に腰を下ろした。 「また兵を出す」  アダルウォルフの一言が沈黙を切り裂いた。 「Ja!! 」  彼の命令に異を唱える者はいない。    今年は春から夏を飛ばして唐突に冬が到来した。  始めは粉雪が舞う程度で、軽い異常気象と捉え、直ぐに元に戻ると楽観視していた。  春の長い、四季のある美しい国だった。  壮絶な寒気に対抗すべく策を講じてきたが、国中の者達が勢力を上げて雪を溶かしても、また降り積もるだけで無駄な足掻きにしかならなかった。  体熱を炎に変える事が可能ならば、その逆もまた然り。  つまり炎ではなく雪を作り出す者。  異常気象は春を嫌う者の仕業、人為的なものであるというところまで突き止めていた。 「前にも言ったように、その者を見付けて捕縛する事こそが今回の出兵の目的だ」 「Ja!! 」 「これは国家に対する反逆罪に当たる。必ず捕らえる」 「Ja!! 」
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