あー、あの日の わいの冒険 1年生 その14 「【雪の日:前編】どろんこ雪だるま」

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 部屋の中がだいぶガランとしていた。なんやろ? 脇に詰まれたダンボール。そして本棚の本が半分ほど無くなっている。入院していた所に持って行ってたんかな?  机の上にはスケッチブックに書きかけの、機械のようなロボットのような何かが描かれていた。 「何? これ」 「設計図」 「せっけいず? ってなに?」  かっちゃんはダンボールの一つを開けて手作りの装置を見せてくれた。車やろか? 蒲鉾の板にタイヤが4つ付いている、単三電池が2個乗っていて、その他にも輪ゴムやらネジやらで部品が取り付けてある。 「これ作るときの、設計図。えーと、説明書みたいなもん、かな」 「ふーーん。で、なに? それ?」  かっちゃんの手元を覗き込んで聞いた。  かっちゃんは答える代わりに、スイッチを入れた。  モーターが回って、「ウィーン」と音を立てる。その回転が太い輪ゴムを回し、前輪の軸を回しタイヤを回す。 「おーーーー」  わいら3人、同時に声をあげた。  かっちゃんがその車(装置)を下に置くと、ゆっくりだが前に走っていく。 「えっ? これ、かっちゃんが作ったん?」  わいは、走る車を追っかけながら聞いてみた。 「うん。まあ。試作品やけど」 「しさくひんってなに?」 「ほんとうにつくりたいもんの、まえのやつ」 「ふーーん」 「これは、まえのまえのまえのまえのまえのまえのやつ」 「え?」 「だから、まだ格好悪いんやけど……」 「アホか、なんでやねん。これ、むっちゃ格好いいやん!!」  わいは声が裏返った。だって、ホンマ格好良かったんやもん。  かっちゃんは、そんなわいのツッコミをキョトンとして見ていた。 「わいも作ってみたい」  そう言うとかっちゃんは少し笑った。   「どないなってんの?」  ゆたやんが壁の前まできた車を持ち上げて、前後左右しげしげと眺める。  わいも気になって顔を近づけた。 「これがモーター、電池でクルクル回るねん。そんでこれがミシンのホビンを回して、この太い輪ゴムを回して、こっちのタイヤの軸につけたホビンを回すねん。そんで走る」 「ふぇー」としか声が出んかった。全く知らんことばっかりや、かっちゃんの家にくるといっつもビックリさせられる。 「えーなー、わいもこんなん作りたいわ。ホンマすごい! 格好ええわ」  もう一回そう言うと、かっちゃんは今度は遠慮なく嬉しそうに笑っていた。
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