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部屋の中がだいぶガランとしていた。なんやろ? 脇に詰まれたダンボール。そして本棚の本が半分ほど無くなっている。入院していた所に持って行ってたんかな?
机の上にはスケッチブックに書きかけの、機械のようなロボットのような何かが描かれていた。
「何? これ」
「設計図」
「せっけいず? ってなに?」
かっちゃんはダンボールの一つを開けて手作りの装置を見せてくれた。車やろか? 蒲鉾の板にタイヤが4つ付いている、単三電池が2個乗っていて、その他にも輪ゴムやらネジやらで部品が取り付けてある。
「これ作るときの、設計図。えーと、説明書みたいなもん、かな」
「ふーーん。で、なに? それ?」
かっちゃんの手元を覗き込んで聞いた。
かっちゃんは答える代わりに、スイッチを入れた。
モーターが回って、「ウィーン」と音を立てる。その回転が太い輪ゴムを回し、前輪の軸を回しタイヤを回す。
「おーーーー」
わいら3人、同時に声をあげた。
かっちゃんがその車(装置)を下に置くと、ゆっくりだが前に走っていく。
「えっ? これ、かっちゃんが作ったん?」
わいは、走る車を追っかけながら聞いてみた。
「うん。まあ。試作品やけど」
「しさくひんってなに?」
「ほんとうにつくりたいもんの、まえのやつ」
「ふーーん」
「これは、まえのまえのまえのまえのまえのまえのやつ」
「え?」
「だから、まだ格好悪いんやけど……」
「アホか、なんでやねん。これ、むっちゃ格好いいやん!!」
わいは声が裏返った。だって、ホンマ格好良かったんやもん。
かっちゃんは、そんなわいのツッコミをキョトンとして見ていた。
「わいも作ってみたい」
そう言うとかっちゃんは少し笑った。
「どないなってんの?」
ゆたやんが壁の前まできた車を持ち上げて、前後左右しげしげと眺める。
わいも気になって顔を近づけた。
「これがモーター、電池でクルクル回るねん。そんでこれがミシンのホビンを回して、この太い輪ゴムを回して、こっちのタイヤの軸につけたホビンを回すねん。そんで走る」
「ふぇー」としか声が出んかった。全く知らんことばっかりや、かっちゃんの家にくるといっつもビックリさせられる。
「えーなー、わいもこんなん作りたいわ。ホンマすごい! 格好ええわ」
もう一回そう言うと、かっちゃんは今度は遠慮なく嬉しそうに笑っていた。
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