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それから、わいらはかっちゃんのスケッチブックを見せてもらった。
今作ってるのは試作品で、ホントはこんなん作りたいんやって言ってた。
そこには宇宙で活躍する探査装置なるものが描かれていた。腕みたいなもんが生えて、アームって言うらしい、いっぱい並んだタイヤに帯が付いていて、キャタピラーって言うらしい…… この時のわいは、かっちゃんが何言ってるのか正直半分もわかってなかったけど、とにかく格好いい。
すげー。かっちゃんは魔法使いか?
知らない事をいろいろ教えてくれる かっちゃんがなんか先生みたいに見えた。なんか、わいらの知らん未来を勝手に見ているような、そして、そこに繋がっているかっちゃんを凄いと思った。
ちょっとまってーや、そんな面白そうな事、一人でやらんと わいらもまぜてーや。そんな気持ちで、ずっとかっちゃんの説明を聞いていた。そうか、先の先の先の先の先の先ってこんなに広がっとって繋がってんねんな。
そんな感じで、かっちゃんが作ってる色んな物を見せてもらったんや。
「ねえ、私、思ってんけど……」
みかんが つばを飲み込みながら、やけに真剣な顔で言ってきた。
「なにい?」
「なんか、ええ匂いせえへん?」
そう言って、大きく息を吸い込む みかん。
「……あほ」
わいが突っ込んだ時、扉があいて、かっちゃんのお母さんがやって来た。
「みんな、そろそろお昼ご飯の時間よ」
もうそんな時間か。そろそろ帰らな。
「かっちゃん、これありがとう」
そう言って車を返す。
「わいも作ってみるわ」
「うん」
「かっちゃん。その完成品。はよ見てみたいなー。それそれ」
スケッチブックの探査機を指差す。
「うん」
「でも、ほんとスゲーわ。これが、しさくひんで、これの先の先の先の先の先の先がそれなんやろ」
「まあね」
「楽しみやな」
「……」
かっちゃんは、黙ってスケッチブックを閉じた。
「……じゃ、そろそろ帰って昼ごはん食べるわ。でないとみかんが凶暴化するしな」
わいが言うか言わないかで、みかんのゲンコツがお腹に飛んでくる。
「ほら、ヤバイ。早よ帰って食べな。ハハハ」
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