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syringa vulgaris
魔女とは悪魔と契り、淫行する。雄山羊とほうきにまたがり、マントを着て空を飛ぶ。人の牛乳を盗み、雷雨を生じさせる。幻覚草の扱いに長けており、人間を麻痺させたり淫乱をすすめたりする。
これが魔女教書やカロリナ法典などで認められた、正式な魔女の定義。これに照らし合わせれば、少女は間違いなく無罪になる。なぜならば少女は処女だった。魔女裁判の過程にて、そのくらいの調べはついていた。裁判記録にもそれは記されている。
こじつけだった。敗国の少女は、戦意高揚の供物にされたのだ。幽閉され、育つに任せて放置された果実の種は、見る者を虜にするような実をならせた。まだ早熟ではある。しかし摘み取らずにはいられない。そんな衝動を駆り立たせた。
男は両腕で少女の服の襟首を掴んでいる。口が半開きだった。滴となったよだれが、少女の頬にぽとりと落ちた。
そして男は両腕を力任せに引っ張った。薄麻の囚人服など、男にとっては紙切れも同然の素材だった。いとも簡単に切り裂かれてしまう。
灰白色の囚人服の裂け目から、少女の素肌が覗かせた。未発達の乳房は粉雪のように真っ白だ。淡く薄く、透明感すら感じさせる突起物に、男は目を奪われた。
少女は息苦しさに呻いている。大柄の男が、腹の上に馬乗りになっているのだ。呼吸ができない。叫び声すら出てこない。男がほんの少し腰を浮かした瞬間に息を継ぐ。くぅっ、という子猫が鳴くような声が漏れた。それが精一杯の悲鳴だった。
「許して下さい。お願い……」
蚊の鳴くような、か細い声だった。息苦しさに呼吸も絶え絶えになっている少女が、男の目を見据えて必死に哀願していた。
この言葉が男の耳に届いた。辺りの人々の耳にも届いた。男を含め、取り囲む民衆達の動きが、その瞬間に止まっていた。
少女は、はっとした。冷たい汗が背筋を舐めた。全身を恐怖が支配する。
男はにたりと笑っていた。誰もが恍惚に酔いしれていた。少女は悟った。懇願は無意味。いたずらに人々を喜ばせるだけだということを。
再び時が動き出した――
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