二人の足跡の上に時が降り積もる

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 ユアヌは重い木のドアをそっと押し開けた。  音をたてないように。  気持ちよさそうに眠っているカトレアナが目を覚まさないように。  けれど細く開いたドアの隙間からは、凍り付くような冷気が室内に忍び込んで、暖炉の火を揺らす。 「ユアヌ?」 「あーあ、起きちゃったか」  ユアヌはもう一度ベッドまで戻って、そっとカトレアナの頬に唇を寄せた。   「お出かけするの?」 「うん、狩りに行ってくるよ。雪が降ってる。きっと大物が見つかるぞ」 「そうね。あなたは狩りの名人だもの。でも気を付けて」 「気を付けるよ。さあ、まだ夜明け前だからもう少しお休み。カトレアナ」  外は一面の銀世界。昨日までは見えていた黒い地面もすっかり雪に覆われた。  背の高い木々に囲まれて、この森の中でユアヌの家だけが暖かい明かりを灯している。  
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