二人の足跡の上に時が降り積もる

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 町ではたくさんの食料を買い込み、余ったお金で美しい絹のハンカチと可愛らしい花を買う。  冬に売られている花は魔法で育てられた贅沢品だ。首を長くして帰りを待っているだろうカトレアナに、少しでも喜んでほしいから。  花を選ぶユアヌの笑顔は幸せそうで、道行く人々が足を止めるほどに美しかった。  町を出て森に入る頃には日が沈み、降り続いた雪がもう足首まで埋もれるほど積もっている。  本格的な冬の到来だ。森の中の細い獣道が雪に埋もれると、人間たちはもう滅多なことでは入ってこない。  真っ白い道に、ユアヌの足跡だけが刻まれていった。それすらも振り返ればもう消えかけている。  雪が降り積もる。  ユアヌは暖かい明かりを目指して黙々と、無垢な雪に足跡を刻んだ。 「おかえりなさい」  家の中からはすぐにカトレアナの声がする。起き上がって窓の外を見ていたようだった。 「ただいま、カトレアナ。寝ていても良かったんだよ?」 「雪が降っていたから」 「そうだね。外はもう真っ白だよ。朝になったら、一緒に出てみよう」 「そうするわ。私、雪は大好き!」  カトレアなの声が弾むとユアヌも嬉しくなる。  けれど暖炉の火も、ともすれば夜の寒さに負けそうになる。 「もう布団の中にお入り」 「はーい。風邪を引いたら大変だものね」 「うん。そう思って、聖樹のオイルを採ってきたんだ。カトレアナが無茶しても大丈夫なように」 「まあ! あんなに遠くまで」 「大したことないさ。それに今日は町まで行っておいしいものを買ってきたからね。一緒に食べよう」 「嬉しい。お祭りみたい」  空間魔法で持って帰った食べ物は、買った時そのままに温かい。  柔らかく煮た野菜のスープは、カトレアナでも楽に食べることができる。町で一番おいしいと評判のパン屋の、真っ白い柔らかいパンを浸してから、カトレアナの口に運んだ。 「おいしい」 「良かった。やっぱり雪が降ってもたまには町に行かないとね。カトレアナのこんなに幸せそうな笑顔が見れるんだから」  ユアヌはカトレアナのしわだらけの手を、愛おしそうに両手で包んだ。  深く年齢を刻んだカトレアナの顔に涙が伝う。ユアヌはそっとその頬へ唇を寄せた。
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