(一)

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「ねえ、それって……」  私は恥ずかしくってうつむいた。彼の方を見ることができなかった。待合室の床はコンクリート打ちだった。  すると彼は「な、いいだろ」と私の顔を覗き込んできた。  私は驚いて「そんなのすぐには答えられないよ」と言おうとしたが、上手く言えなかった。  逆に彼が言った。 「予約な。お前のこと、予約だからな。答えはあとでいいから。忘れるなよ」  そうして笑顔を見せてくれた。嬉しかった。私、この人と一緒になりたい。このとき私はそう思った。 (続く)
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