リボン

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次の日家に居なくなったお姉ちゃんの部屋には一通の手紙が置いてあった。 『ママごめんなさい。娘になれなかった。』 ママは黙ってうつむくと手にしていた手紙をビリビリと破り床に投げつけた。 そして机にあったハサミでラブリーな柄のベッドカバーからカーテンに至るまで狂ったように全てをびりびりに切り裂き、クローゼットや箪笥に入っているフリフリの洋服達もレースの下着もハサミと手で切り裂いていく。 私はドアの側で悪霊に乗り移られた様なママの姿をただ見つめる事しか出来なかった。 全てを切り刻み終わると四つん這いになったまま「ハァハァ」と肩で息をしているママの口が微かに動いた。 「なんでよ」 私にはそう動いた様に見えた。 ママは大きく深呼吸をすると、立ち上がり、怯える私の顔を見てにっこり笑った。 「あーあ、お姉ちゃん死んじゃった。あーちゃんとママ、女2人楽しく過ごそうね。朝ごはんどうする?そうそうパン屋さんであーちゃんの好きなシナモンロール買っておいたの、とっておきのお紅茶入れるわね」 ママは鼻歌混じりでリビングへと向かって行った。 「う…うん」 私はママがリビングのドアを閉める音を聞くとその場にへたり込んだ。 ガダガタ震えの止まらない自分自身を抱きしめ「しっかりしろ」と言い聞かせた。
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