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病室に行き、母さんに本を渡した。爺ちゃんが言っていた事を伝えると。
「ったく!お父さんの面倒を見てるうちはボケる暇なんかないわよ!」
と言いながら嬉しそうに受け取った。
「あっ!そう言えば賢人!今日夕方、お父さんから電話がかかって来るはずなの。私は大した事ないからこの事内緒にしておいて欲しいの」
「でも爺ちゃんが出たら?」
「あっ!早く帰りなさい!」
俺は追い出される様に病室を出さされた。
家に帰ると、門の呼び鈴に張り紙がしてあった。
[配達の方へ、居ます!ちょっと長めに待ってて下さい]
あじのある文字で書いてある。
昨日の婆さんの話しだな、と思いながら張り紙を剥がし家に入った。
「ただいまぁ」
「お帰り!」
声はすれど姿は見えず。
「爺ちゃん何処?」
「トイレじゃ!」
直ぐに爺ちゃんがトイレから出て来た。
「爺ちゃん、流した?音聞こえなかったけど」
「寒いから便座に座ってただけだ!」
また、昨日の話かよと思いながら
「寒いならエアコンつければ良かったじゃん」
「つけ方わからん?いつも美佐子さをやが快適な温度にしてけれてたからのぉ」
爺ちゃんが少し寂しそうに言っている。
「あっ!賢人に頼みじゃ。ずぅっとトイレに入っとったら電球が切れたでの、付け替えてくれんか?」
「わかった」
電球の予備がしまってある棚を開けると、トイレに合う電球が2種類ある。普通の電球とLEDだ。昨日の爺ちゃん達の話を思い出し、普通の電球を手にとった。
脚立に乗り、取り換えようとしている俺を見上げた爺ちゃんは心配そうに聞いて来た。
「それは何電球じゃ?」
「LEDだよ」
「寿命が長い奴か?」
「爺爺ちゃんよりは短いよ。切れたらまた言って」
こんな嘘なら許されるだろうと思い。付け替えた電球を見上げた。
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