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母さんの声がする。
「お父さん!……あらぁ?何処にいるのかしら?」
「爺ちゃんなら縁側にいるよ」
母さんは爺ちゃんを見つけ。
「あら、また? たま~に何か見てしょんぼりしてるのよねぇ」
爺ちゃんは夕陽に照らされた縁側で何かを見ている。その背中は寂しげだった。そこに母さんが歩み寄り。
「何を見てるの?」
「あぁ美佐子さん、わしゃ早く婆さんの所に行ってやらんといけんかのぉ」
「どうして?」
「ほれ、これ……年に数回あの世から振り込んでくれている俺の小遣いなんやけど、26円とか14円とか…苦しいんかと思うてな」
「はいぃ~っ?」
母さんが通帳を見た。
「ブハ~~っ!」
母さんが笑いを通り越した爆音を響かせて縁側に突っ伏した。
「なんじゃ!人の貧乏を笑いやがって!」
爺ちゃんは本気に怒っている。ヤバイ俺の出番か?と思い一歩足を出した時。笑いからの涙目で母さんが起き上がった。
「お父さん、これお義母さんじゃないわよ」
「だって利子って書いてあるじゃないか!」
「違うって、これは利子!」
それを聞いた爺ちゃんは手が震えだし、あろうことかとんでもないところに怒りをぶつけた。
「ったく!あの親め!紛らわしい名前をつけやがって!冥土で待ってやがれ!」
空に向かって俺のひい爺さんひい婆さんに文句を言っていた。
暫くして台所から爺ちゃんと母さんの声がして来た。もしかして爺ちゃんが言っていた勉強か?俺は隣のリビングで息を潜めて聞いていた。
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