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「あうぅ…、サドが近づいて来てんの分かってたんなら起こしてよ、もう」
学食のテーブルに突っ伏しながら、静香は親友の木曽川巴に不満を漏らす。
「いや無理っしょ、だってサド、あんたが居眠りしてるの気付いてて、ハナっから注意する為に教壇離れて出向いて来たんだから」
ウスターソースかけ過ぎのクリームコロッケを旨そうに頬張りながら、巴が答える。いつもジャンクな食べ物ばかり食べている印象しかない。
「それよりもさ、単位もらえるの? あとひとつでも落としたらいよいよ留年確定なんでしょ?」
「うん…、取り敢えずサドの今度のフィールドワークには絶対参加、その上でレポート書かなきゃ単位はくれないってさ」
「うわっ、だり」
「ホントよ」
食べながら話す巴が飛ばした飯粒を指でテーブルの下に弾きながら、静香がむくれる。
「ねえ静香、あんた最近午前の講義はいつも眠そうにしてるけどさ、なんかあったの?」
「うーん…、あるっちゃ、ある、かな」
曖昧な返事に、果たして巴は食い付いてきた。
「なになに、フラれた? 太った? ハゲた?」
「そんなんじゃないわよ、あと最後の何よ。…あのね、最近ちょくちょく変な夢を見るの」
「変な夢? どんな?」
「それがさ、あんまりよく覚えてないんだ。とにかく悲しい夢ではあると思う。で、それを見ちゃうと目が覚めちゃって、そのあと眠れなくなっちゃうのよ」
「ふぅん、ストレス溜まってんじゃないの?」
具体的な内容を聞けないと知るや、巴はすぐに興味を失ったような生返事になる。
「そうなのかな?」
「あたしもさ、最近欲しいもの一気に増えちゃって、金欠性のストレス障害発症しちゃってんのよね」
「勝手に変な病名作らないでよ、巴のはただの無駄遣いだから」
「あーあ、富を呼ぶ魔法のお椀か、そんなんがあったら一生遊んで暮らせるのになあ」
A定食に付いた汁物の椀を弄びながら、巴がため息とともに呟く。
「何? 巴まさか信じてるの? あんなの御伽噺に決まってるでしょ」
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