とある団塊世代の四国遍路日記 第一回区切り打ち       写真;佐喜浜から室戸岬方面を望む

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第四日目 神山~第十三番大日寺~第十七番井戸寺~徳島市(オリエントB       H) 平成19年11月10日(土)晴れ 28km(44,000歩)  「民宿あすか」出発はAM7:25、早速、県道438号線を歩くことになる。最初の峠で休憩を取っていると、長野の青年と野宿の2人(昭和22年生まれと言う)と合流し、更に2人連れになっていた埼玉のIさんにも追いつかれた。Iさんらの2人はスピードがあり、昨日の焼山寺も4時間程で登ったと言い、見ている間に離されている。野宿の人らとしばらく歩調を合わせていたが、これでは今日の行程が進まないと思い自分も先に出ることにした。阿保坂を越え鬼籠野という所で主要地方道21号線に入り、再び峠を越えるとオーロ喜来の分岐に着く。ここで距離の短い山側の道に行くか、また鮎喰川に沿った川沿いの道を行くかで思案していると、野宿の3人に追いつかれた。先行したIさんらは川沿いの道を行った様であるが、自分は山側の道とした。この道を進むと徐々に坂がきつくなり、これは失敗であったと何度も頭をかすめた。特に、大桜トンネル手前の1kmでは、かなりの坂道ですっかり足を使ってしまった。そして、案の定、下りは急傾斜で道を真っ直ぐに歩けず、S字を描いて歩かざるを得ないことになる。この急傾斜もようやく過ぎ、長い道を歩いた所では、近道となる尾根越の道に地図で点線が書かれている。ならばここへ行こうかとも考えたが、札所を巡る正規の経路以外の道はほとんど整備がされていない様にも思えた。仕方なく一宮の交差点まで行き、主要地方道21号線を戻ることにした。すると『第十三番大日寺』の手前で、先行したIさんらに会い、やはり山側の道は近かったが、足の疲労はかなり蓄積していた。 『大日寺』は道路を挟んで一宮神社と向かい合い、境内には大きな手の像が建てられていた。朝より4時間半の歩きで、しかも坂道でかなりしんどい思いもしていたので、参拝後は休憩所でへたばっていた。  十四番札所へは鮎喰川沿いのひなびた遍路道を歩き、一の宮橋を渡ってS字状のカーブを曲がり切ると『常楽寺』があった。この寺は岩盤の上に建てられ、凹凸のある岩の上を歩いて本堂に向かうことになる。この寺でも団体の遍路が行き交っており、頼まれ物の納経帳まで持参している様であった。  ここから『第十五番国分寺』は800m程の距離にあり、ここで初めて鐘を突いていた。これは山門のすぐ左手にあり、早く気が付いたからである。  次の『第十六番観音寺』までは1.8kmと、この辺りは札所の密集地で、住宅地の中を進むと間も無く町屋の中に見つけた。この札所も打ち終え、外へ出た時には既にPM2:20になっており町中なので、どこかに飲食店があると思っていたが見つけられない。たまたまあった小さなスーパーでパン(110円)を購入すると、お茶のお接待を受けた。店の主人へ丁重に礼を述べ国道192号線に出るとラーメン屋等の数軒の飲食店があった。これも致し方ないと思いつつ、狭いながらも車が多い道を十七番札所へと歩いている。  朱塗りの仁王門が建つ『井戸寺』は名前からすると井戸があるはずであろうが、歩き遍路の余裕の無さで、これを探すことも出来ない。ともかく参拝と納経を済ますと、今宵の宿へと向かわなければならない。  主要地方道30号線に出ると車の量が一段と多くなる中、上り坂の先に中鮎喰橋が見えて来る。ここまで来ると坂道はもう勘弁して欲しいと思うが、徳島市街はこの橋の向こうにある。マメが疼く痛い足を引きずり金剛杖で推進力を付けながら、この坂を登り長い橋を渡りきった。その袂で休憩していると、一台の乗用車が近づき初老の男性が「何かお手伝いをすることはありませんか」と問い掛けて来た。これは遍路旅で出会う車接待だと直感的に思ったが、宿は直ぐ近くであると丁寧にお断りをした。しかし実際は、ここよりまだ6.5kmの距離があり、喉元まで「お願いします」と言う言葉が出そうになっていたが、じっと我慢をしている。そこで、ここからが悲壮な2時間となる。既に日は沈み、暗闇が迫り来る中で徳島市街を必死に歩いている。その横を市バスが何台も走り抜け、停留所を幾つも通過したが、こうなれば意地で歩き続けている。眉山の麓を巻く様に歩き、市の中心部を通る頃にはすっかり暗くなってしまった。阿波踊り会館を過ぎ、金毘羅宮の祭りの夜店が延々と並ぶ所には、店明かりが煌々と輝いている。そんな道路の向かい側を歩いているが、今は夜店に立ち寄る気力も無い。この夜店が途絶え、しばらくするとJR二軒屋駅があり、その前に「オリエントBH」を見つけた。チェックインはPM6:30、ここで靴を脱ぐと痛くて履くことがいやになると思い、荷物を部屋に置くと直ちに向かいの居酒屋に飛び込んだ。やはり、ここでも生ビールが美味く、店員と遍路話や北陸の話をしながら、かなり飲んだ様であるが料金は3、000円と少しであった。筋肉の吊りはほとんど無くなっているが、足のマメは大きくなっていた。入浴後は足の手入れをし、今日も寝入りが早くバタンキューであった。
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