いつかの秋

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おや?今日はあたたかい日だね。 日向ぼっこしたいな。 僕は夜が大好きで、朝や昼は苦手だけど、もっと苦手なのは寒くて冷たい冬なんだ。 今のうちに日向ぼっこしたくなるのもわかるでしょ? ペタペタ。 こうやってガラス窓にお腹をくっつけて、じっくり身体をあたためると、食欲も湧いてくるんだ。 僕なりのルーティンさ。 ワワッ!? 僕のお腹に微かに響いた危険信号。 隠れなくちゃ、はやく、はやく! 「慌てて逃げなくてもいいじゃない?ツレナイなぁ、ヤモリ君」 僕が逃げた先のガラスをコツンと叩いてくるのは……菜々だ! やられた!菜々の来襲だ! 菜々は僕を見つけると、笑いながら指で追いかけてくるんだ。 結構しつこいから参っちゃう……。 「フフフ。食べ過ぎて動けないの?」 失礼だね、日向ぼっこ中だよ。 菜々と一緒にしないでよね。 「ねぇ?君のおててはかわいいね。五本の指と吸盤がキュート」 な、なんだい。 お世辞なんかに騙されないからね。 吸盤が羨ましいの? 菜々も、壁を自由に伝って遊びたいのかな? 「君のおてては雪の結晶みたい。足あとがキラキラ素敵だね」 菜々にはそう見えるの? ふうん。 ……満更でもないけどさ。 ……気が向いたら、また日向ぼっこしてあげてもいいけど。 だってもうすぐ大嫌いな冬が来る。 僕はお気に入りの隙間で、ジッとあたたかくなるのを待つだけ。 だから今のうちに、キュートな僕を堪能すれば?
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