いつかの秋

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いつかの秋

僕は由緒正しきニホンヤモリ。 この家に住みついて1年目のルーキーさ。 前のすみかは都会のマンションだったけど、大好きな隙間は無いし、昼も夜もうるさいし、繊細な僕は静かな場所へ引っ越ししたんだ。 ここはまぁまぁかな。 寒さを防ぐ隙間はたくさんあるし、ご飯にも困らない。 古い家っていいよね! この家の主は。 洗い物が上手な真司(しんじ)オスと、いつも笑っている菜々(なな)メスのおっちょこちょいコンビだ。 真司はしょっちゅうどこかに頭や肩をぶつけては、変な声をあげている。 昨日はね、足の指をどこかにぶつけたみたい。 クフフ。 涙と鼻水を菜々に拭いてもらってた。 菜々はね、笑い出すと止まらないみたい。 大きなお腹を抱えて、足までバタバタさせて笑っている。 クフフ。 僕もなんだかつられて笑ってしまうよ。 今日もね、暖簾に引っ掛かった真司を見て、菜々が大笑いしているよ。 けどさ、笑い終わると必ず、真司は心配そうに菜々のお腹を撫でるんだ。 優しく、ゆっくりとね。 真司と菜々に、もうすぐ赤ちゃんとやらが増えるらしいんだ。 人間も子孫繁栄、強い遺伝子を残さなくちゃね! あぁ、お腹すいたなぁ……。 真司と菜々が眠ったら、僕のディナータイムさ。 あと少し、もう少し。
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