【第一話】Ωの収容所、売られたΩ。

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【第一話】Ωの収容所、売られたΩ。

 無機質なコンクリートの牢屋に、男が座り込んでいる。  足かせをつけられた男の体は、パンツ以外身につけているものはなにもなかった。  男は寒さに震えながら、己の良心と戦っていた。 「……っ」  鼓動が早くなる。体はもう、快感を求めていた。  牢屋には、毛布とトイレしかない。 「はあっ…はあっ…」 「No.4532、アクモ。買われる時間だ」 「…っはい…っ」  アクモと呼ばれた男は足かせを外されたあと、やっとの思いで立ち上がった。  その瞬間、従業員だと思われる男性は容赦なく、アクモの手に手錠をかける。  いまさっきからの発情とはいえ油断ならないから、だそうだ。 「今日は確実にお前が売れる。新入りが多すぎて、もう入り切らなくなってきているからな。お前もそろそろ売りの場に出してもいいかと思って」  アクモは今年で20歳になる。  それは、直に売り飛ばされることを意味していた。 ガチャ。  そこの部屋は、【売れる者の戯れ場】と言われ、感度のいいΩを求めるセレブがやってくると言われていた。  壁は普通の部屋のように、白い壁紙で覆われている。  床は、Ωを傷つけないようにカーペット調になっていた。  向こうのほうには、これから来るであろう客専用の椅子が並べてある。  そして、アクモがいる方には、色々な玩具(おもちゃ)が用意されていた。  男性は、その部屋の真ん中にある鎖に、アクモの手錠を固定した。 「…っあ」  その途端、奥のドアから、客がゾロゾロと入ってくる。 「うわ、凄いフェロモンの匂い…」 「……………」 「今度こそ勝ち取ってやる!」 「今日は発情中の子か…」  ざっと10人ほどか。  俺は男なのに、随分集まるな、とアクモは思った。 「それでは、ご着席ください。それでは、No.4532アクモのせりを開始します。」  手順はこうだ。  まずアクモがここにいる客全員とヤる。→そこから、アクモを何円で引き取るのかせりが始まる。  アクモは、ここにいる客全員とヤるなんて嫌だなと思いながら客を見渡した。 「それでは……様からお願いします」  名前がわからないうちに、その髪が白色でピンクと紫のオッドアイの男はやってきた。
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