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 私の言葉に女性が心を動かした雰囲気はない。噂は所詮(しょせん)噂ということだろうか。  「お()きします。  本当に自立型……ロボットが人類に恩恵となるでしょうか」  不自然な箇所で言葉が止まったが、気にしないで答えた。綺麗ごとだが半分程度は本気だ。  「思います。  指示なしで動いてくれるなら、人手不足の業界が喜ぶでしょう。特に介護業界では」  介護が職業となってから、常に人手が足りない。  私もいつか老いる。安心して介護を任せられるロボットがいたら、気を使わないしありがたい。  正しいことを言ったと思ったのに彼女の表情は暗く、執事も好意的でない視線を向けてきた。  「それはつまり、人が面倒に思うことを押しつけるという意味ですよね」  「え……あ……」  違うとは言えなかったが、面倒を(にな)うのが機械だと思った。
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