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 「研究者達が目指したのは、与えられた情報の中で最適解をいかに早く求めるか、ということ。  展開が複雑になるゲームほど、最適解を見つけるのは難しい。なので、挑戦のしがいがある。  自分達の開発したAIがゲームを理解して勝利していく。それは素晴らしいことです」  ここで彼女は紅茶を飲むために言葉を切った。  「でも、それがAI(人工知能)の到達点でしょうか。  研究者達が憧れたのは、自分で考えて自分の意思で行動するロボットだったはず」  その実用化に成功したのでは、という噂を確かめたくて私はここにいる。当然すぎる言葉だ。  「分かっていらっしゃいませんね。自立型のAIが(あらわ)れればどうなるか」  もちろん分かっている。自分で判断して行動するロボット。人が嫌がる仕事を(まか)せるには最高の存在だ。  「貴方が嫌なことを命じられたらどうしますか。喜んで指示に従いますか?」  「相手にもよりますけど、逆らえない相手なら嫌々ですけどします」  私の答えは、彼女には想定内のようだ。
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