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男と一緒に荷物を持って、小高い山を登るのは少し辛い。だが、運搬の手伝いが乗船の条件だから仕方ない。黙々と坂を上る。
やがて見晴らしのいい場所に着くと、男は木に向かって声を掛けた。
「荷物と客を連れてきました」
不思議なことに……不思議でないのかもしれないが、木は声を返してきた。
=荷物はいつもの場所に。客人は玄関に行っていただくように伝えてください=
執事、という言葉が浮かぶ口調だ。
「あっちが玄関だ。俺は荷物を置いたら一度帰る。夕方、迎えに来る」
「すいません。お願いします」
島に定期便はないから、再び来てもらう必要がある。
男は片手を上げながら、細い道を歩いていった。一人になると、風の音以外聞こえなくなる。
私も玄関に至るという道を歩き始めた。
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