164人が本棚に入れています
本棚に追加
5
「依頼に応じていただいて、ありがとうございます」
複数の人間を経由したので大変だったが、やっと目的の女性の前にいる。興奮が身体を活性化させる。
「いいえ。わたくしもこういう機会を設けたいと思ってましたから、ご連絡は好都合でした」
世間から隠れて生活していると思ったから、意外な言葉に驚いた。
女性の容姿は平凡で、おそらく二十代半ばくらい。この女性が、莫大な財産の所有者……自分との格差に少し皮肉な気分になる。
「どうぞ、お座りに。
それと、珈琲か紅茶をお出ししたいのですが、どちらがよろしいでしょうか」
尋ねてきたのは、さっきの声の男だ。日本人ではないようだが、外見がいかにも執事という男。
「コーヒーを頼みます」
「承知いたしました」
主人の好みは熟知しているようで、確認はなかった。
最初のコメントを投稿しよう!