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 「依頼に応じていただいて、ありがとうございます」  複数の人間を経由したので大変だったが、やっと目的の女性の前にいる。興奮が身体を活性化させる。  「いいえ。わたくしもこういう機会を(もう)けたいと思ってましたから、ご連絡は好都合でした」  世間から隠れて生活していると思ったから、意外な言葉に驚いた。  女性の容姿は平凡で、おそらく二十代半ばくらい。この女性が、莫大(ばくだい)な財産の所有者……自分との格差に少し皮肉な気分になる。  「どうぞ、お座りに。  それと、珈琲(コーヒー)か紅茶をお出ししたいのですが、どちらがよろしいでしょうか」  (たず)ねてきたのは、さっきの声の男だ。日本人ではないようだが、外見がいかにも執事という男。  「コーヒーを頼みます」  「承知いたしました」  主人の好みは熟知(じゅくち)しているようで、確認はなかった。
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