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 少し待つと、紅茶とコーヒーが運ばれてきた。あまり詳しくないが、高級品なのは分かる。いつもは砂糖を入れるが、そのまま飲んでみる。  「美味しい……」  思わず声が出ると女性は微笑んだ。場の空気が(ゆる)むと話しやすくなった。  カップを皿に置いて、私は声を掛けた。  「今日、お(うかが)いしたのは……」  そこまで言うと、彼女は微笑んだまま(うなづ)いた。  「分かってます。  わたくしから見た素顔の父、というのは名目(めいもく)で、本当は(ささや)かれている噂の真偽を確かめるためですよね」  気づかれていたことに驚きはない。きっと今までも同じ目的で取材の申し込みがあったはず。私の依頼だけを受けたのが意外なだけで。  なので、この取材を(もと)に発表する予定の記事には、高額の報酬が約束されている。もし事実なら、世界が一気に変わる。
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