桜と吸血鬼

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吸血鬼という人種は(栄養剤)である血液を得るためなのか、とても美しい容姿を持っている。 男女共にすらりと均整の取れた肢体、色素の薄い髪と白い肌、綻ぶ薄紅の花弁の様な唇、整った顔立ち、そして何よりも特徴的なのが真紅の瞳だ。 この瞳は闇夜にあっても輝きを放ち、人の目を惹き付ける…… そのため寄って来る異性は後を絶たず、吸血志願者もひっきりなしだ。 聡が物音を極力立てずに菓子パンの袋を開けて、もそもそと口に運んでいるといきなり肩を抱かれた。 驚いてそちらを見れば、夕陽がにやにやと笑っている。 音楽を止めて友人の顔を見た。 「終わったん?」 「ん、オレもメシ食う」 夕陽はコンビニ袋を開けておにぎりとペットボトルを取り出した。 「オネーチャンが昼メシだったんじゃねえの?」 「ありゃダイエットのし過ぎ。薄くってさ。もっと健康的な娘の方が良いね。聡なんか美味そうだよね」 吸血鬼は性的な対象しか吸血しないらしい。 夕陽はストレート(異性愛者)なので、男の血は飲まないはずだ。 「しょうがねぇなあ、じゃ、飲んでみる?」 聡はにやりと笑ってパーカーの首筋を寛げた。 「良いの? オレ、結構聡の事カワイイと思ってたんだけど」 王子様系の整った顔が寛げた首筋に迫って、聡は少し慌てる。 175センチと平均身長よりはやや大きいものの夕陽は183センチ。 素早く覆い被さるように身体を重ねられて身動きが取れない。 「ちょ……冗談っ! 重いって!!」 肩を押さえる手はそれほど力を入れているように見えないのに、跳ね除けようとしても微動だにしない。 「誘ったのはそっちでしょ?」
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