桜と吸血鬼

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そんな彼等の弱点の一つは日光だが、直射日光ですぐに灰になったりはしない。 しかし長時間紫外線に当たると酷い火傷を起こす。 日サロの様に強烈な紫外線なら10分位で死ぬんじゃないかと思われる。 無論、誰も試してはいないが。 もう一つは桜。 木に接触したり、香りを嗅ぐとアレルギーを起こすのだ。 皮膚の炎症や目眩、吐き気が初期症状で、酷くなると血圧の低下による昏倒、最悪は死に至る。 これはどうやら開発当時にわざと設定された弱点らしい。 『始祖』程でなくても国体レベルでの体力と持久力を持つ彼等が結託して人間に反抗した場合に、それを押さえつけて死に至らしめる為の首輪の様なものだ。 本能的に桜を忌避するようで、彼等は桜の花の絵だけでも(いと)わしい顔をする。 更に言うならば、生殖能力が極端に低い。『始祖』のように『眷属』を生み出すことのできない吸血鬼達は、人間同様の繁殖行動により子孫を残すのだが、その際の受精率が男女共、極端に低い。 取り分けて性的欲求が低いという訳ではないのだが、生殖能力が低いために今までそれほど数を増やすことなく存在している。 とは言っても平均で各都道府県に十世帯前後、この美男美女が存在するというのもなかなか贅沢なものだが。
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