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マリン・スノー
その日は前の晩から大雪警報が発令されていた。
窓から見える景色は灰色の雲と白く霞んだ高層ビル。
大粒の雪が風に乗って街に降り積もる。
不意に――インターホンが鳴った。
ドアを開けるとそこにいたのは雪をかぶった配達員。
(こんな日に仕事とは彼もついていない)
「――――お届け物です」
(ネットで注文した荷物は全部届いたはず……?)
小首を傾げながらその荷物を受け取った。
小包みの差出人は――オトヒメ。
段ボールをテーブルに置いて小首をかしげた。
(オトヒメ? そんなふざけた名前――あっ!)
すぐに思い出した。
数か月前に釣りで訪れた小さな港町で出会った女性だ。
黒髪に透き通るような肌。なによりたわわなボディが心をくすぐる。
目元の不思議な色の泣き黒子が気になったが、田舎町では滅多にお目にかかれない美女だった。
全く魚を釣り上げることができなかった彼女に、仕掛けの作り方やロッドの扱い方などを手取り、足取り、腰取り教えてやったのだ。
『こんなにたくさんのお魚! ぜひともお礼の品を送らせてください』
魚と引き換えに自分の住所を教えたのだ。
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