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かちり、と。
頭の中のパズルのピースがはまった。
『お主は今、大きな悩みを抱えているだろう。それを解決しておいた』
長靴を履いたスコの台詞が蘇る。正輝が拾って来たスコによって解決した、家庭崩壊の危機。
あまりにも出来過ぎた感が無くもないが、自然と笑みが浮かんで、ぷっと吹き出してしまった。
『どうしたの、義希? 笑っちゃうくらい変だった?』
電話の向こうで母が小首を傾げる気配がうかがえる。
「いや、良かったなって思っただけだよ」
麻婆弁当は冷めてしまっただろうが、俺の胸には今、温かい灯がともっている。
「今度、お土産持って帰るよ」
両親仲が悪くなってから実家には寄りつかずにいたが、近い内に彼女を連れて帰ろう。スコ好きの彼女だ、きっとうちのスコの事も好きになってくれるに違いない。いわんや、家族も彼女の事を。
スコの恩返し、か。
なんて駄洒落みたいな事を考えながら、俺はバイトが休めそうな日を探し求めてカレンダーを眺めながら、彼女から教わった猫の世話の仕方について、母と話し続けるのだった。
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