初陣の勧め

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 だからと言って、このままスルーするという手はない。 ――折角に気付いたのだから、何かしたい。 そこで、プレゼントになるような物を見繕っていたのだった。 ――二人で使えるものがいいよね。 「夫婦茶碗とかペアカップかしら?」 手頃なものならそれだろうけれど、今使っている物もしっくり手に馴染んで捨てがたかった。 「ずっと棚に飾っとくだけなんてイヤだし……」 ――かと言って値の張るものなら……。 チラリと時計に目を向けた。 「時計は……私は携帯で十分かな」 夫は填めているが、それなら一つで良い。 夫との絆が乏しい今、何か一緒のものが欲しかったのだ。 「真司さんの欲しいもの――」 本当は気付いている。 気付いていながら、目を背けている自身にも気づいているのだ。 私はそっと下腹部に手を添えていた。 それでいて私の欲しいもので間違いない。 「気付き――って、神様からのギフトっていうものね」  私はショッピングモールの三階、東にある一角に向けて踵を返していた。 そして、正解の鐘がなったように、それはあった。 『神様とは確かにいらっしゃるものです』――神父様から直々に学んだ言葉が甦る。  大学の講義で学んだ宗教学で、度々耳にしたその教えは、少しばかり女性的な柔らかい声音の神父様、その声のままに、余韻を持って私の脳裏に響いていた。 「凄い、ドンピシャ。こ、これ……かも」 私が一目ぼれしたそれは、思い描いたものそのままであった。 ――か、可愛い……。 私が手にしたもの――。 乙女の初陣に相応しい『勝負下着』であった。
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