65人が本棚に入れています
本棚に追加
だからと言って、このままスルーするという手はない。
――折角に気付いたのだから、何かしたい。
そこで、プレゼントになるような物を見繕っていたのだった。
――二人で使えるものがいいよね。
「夫婦茶碗とかペアカップかしら?」
手頃なものならそれだろうけれど、今使っている物もしっくり手に馴染んで捨てがたかった。
「ずっと棚に飾っとくだけなんてイヤだし……」
――かと言って値の張るものなら……。
チラリと時計に目を向けた。
「時計は……私は携帯で十分かな」
夫は填めているが、それなら一つで良い。
夫との絆が乏しい今、何か一緒のものが欲しかったのだ。
「真司さんの欲しいもの――」
本当は気付いている。
気付いていながら、目を背けている自身にも気づいているのだ。
私はそっと下腹部に手を添えていた。
それでいて私の欲しいもので間違いない。
「気付き――って、神様からのギフトっていうものね」
私はショッピングモールの三階、東にある一角に向けて踵を返していた。
そして、正解の鐘がなったように、それはあった。
『神様とは確かにいらっしゃるものです』――神父様から直々に学んだ言葉が甦る。
大学の講義で学んだ宗教学で、度々耳にしたその教えは、少しばかり女性的な柔らかい声音の神父様、その声のままに、余韻を持って私の脳裏に響いていた。
「凄い、ドンピシャ。こ、これ……かも」
私が一目ぼれしたそれは、思い描いたものそのままであった。
――か、可愛い……。
私が手にしたもの――。
乙女の初陣に相応しい『勝負下着』であった。
最初のコメントを投稿しよう!