第3話 告白

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「コウ、他のビールねぇの?」 「飲んでから文句言うなっての。自分で買ってこい」  リビングで湊介らと話していたコウは、座っていたソファから振り返って嗜める。進士は肩をすくめ、 「ったく。久しぶりに帰って来たってのに、扱いが雑だな?」 「久しぶり過ぎんだよ。ろくに連絡も寄越さないで何いってんだよ? な、清。お前だって暫くショックで落ち込んでたもんな? 突然、イギリス留学だとか言ってさ。で、数年振りに帰ってきて構えって、そりゃムリだろ?」 「ヘイヘイ」  進士は肩をすくめると、視線をついと清にむけてきた。手にしたビールに口をつけながら。 「なに? そんなにガックリしてたんだ?」 「してないよ…」  清は視線を落とし、すっかり空になった皿を手に立ち上がる。  すると、その言葉を聞き逃さなかったコウが。 「ウッソばっか。進士にもう会えないって泣いてた癖に。当分、日本にいるんだろ?」 「ああ。モデルの仕事はこっちにシフトした。で、泣いたって? あの時は済まなかったな。で、仕切り直して付き合ってみるか?」  俺は思わずその言葉に手にしていたスプーンを取り落とした。皆の視線が一気に集中する。俺はスンマセン!と小さく頭を下げた。 「なんでそうなるんだよ…」  清はチラと俺を見てから答える。 「だって、俺があっちに行く前、ちゃんと付き合ってくれって言ったろ? あの時は留学も控えてたし、当分、日本に帰るつもりもなかったから断ったけど。今、俺フリーだし、清がいいならいいぜ?」  俺は息を詰めるようにしてその答えを待っていた。心臓の音がうるさい。  清は、この男の事を昔好きで、告白までしていて。もしかしたら、付き合っていたかもで。しかも、俺とは違って大人で贔屓目なく格好いい。付き合うかどうかも返事をしない俺を待つより、この男に応じるべきなのでは? と、はたから見ていれば思うだろう。俺だってそう思う。 「何言ってんだよ。そんなのもう、終わってるし。俺はもう、好きな奴いるからいい」 「好きな奴って、付き合ってないなら俺と付き合えばいいだろ? あの時、日本に残っていたなら、お前と付き合ってたんだぜ?」  と、リビングから冷やかしの声が上がる。短髪の髪を金色に染めた女性、アキだ。 「それって告白? 熱いねぇ。付き合えばいいじゃん。取り敢えず」 「アキ。人の話に首突っ込まない。清は真剣なんでしょ? その相手に…」  マナは黒く艷やかな髪を肩から跳ね上げ、黒目がちの瞳を清へ向けてくる。こう見るとかなりの美人だ。  清は今度はしっかり俺に視線を向けると。 「マナさんの言う通り。俺は真剣だよ…。だから進士さんとは付き合わない」  きっぱりと言い切る。その宣言に胸がドキリと高鳴った。進士は顎に手をあてながら。 「ふぅん。俺を振るって結構勿体ないと思うケド。俺も真剣に清と付き合いたいって言ったら? 少しは考えとけよ」  そう言うと、清の頭をぽんっと軽く叩いてから、傍らを通り過ぎ、皆の集まるリビングへと向かった。清の言葉など意に介さないよう。  清は叩かれた瞬間、ピクリと肩を揺らす。その頬が僅かに染まったのを見逃さなかった。  ああ。でもまだ、好きなんだな。  瞬間、そう思った。  昔好きだったのなら、それも当たり前だろう。けれど、胸に痛みが走る。  俺は、清の一番じゃない。
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