第9話 海からの便り

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 遠くでサイレンの音がする。  あの子は、ちゃんと浮いているだろうか?  流されても、ボードにつかまっていれば、きっと沈むことはない。  なんとか揺れる波間に子どもを見つけ、足にボードのストラップを括り付けてやった。これで、ボードと離れる事はない。  きっと助かる。   「大丈夫だから! 絶対、ボードを離すな!」  涙目の少年の細い背を、背後から支える。なんとか沖合から斜めに移動し、ゆっくりと岸を目指した。  俺、今日。清に会わなきゃいけないんだ。  間に合うかな? 岸についたら、直ぐに帰らないと。  大事な日なんだ。絶対に約束は破れない。  清。俺、お前が──。 「っ!」  大きな波に身体が飲まれる。手がボードから離れた。岸まではあと少し。  ゴボリと身体が海に沈む。俺はキラキラと光る青い海面を見上げた。  早く、上がらないと。  清に、言わなきゃいけないんだ──。  遠くで響く、サイレンの音。    俺の意識はそこで途切れていた。
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