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「すばるが…?」
コウから連絡があったのは、お昼を過ぎた頃。今日のイベントに備え、自室で落ち着かない時間を過ごしていた時の事だった。
すばるに時間になるまで会わないから、そう宣言され。致し方なく、すっかり読み古した文庫本を捲っていたのだが。
『ああ。海に遊びに来ていた子どもが沖に流されて、それを助けにでたらしい。子どもはすばるのボードに乗って助かったんだが、途中、すばるが…』
コウの言葉が途絶える。
清はぐっと手の平を握り締めた。
すばるに限ってそんなことない。
だって、すばるは今日、俺と金星食を見ると約束した。そのすばるが、見つからないなんて。
それが何を意味するのか、分かっているつもりだ。海での遭難はイコール死につながる。
でも、認めたくない。
そんな、はずがない。
清らは荒れた海の中、捜索もままならない警察や海難救助隊の様子を見守ることしかできなかった。
そして、数日経っても、すばるは見つからなかった。
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