88人が本棚に入れています
本棚に追加
後日談 その後
すばるはその後、両親とも涙の再開を果たした。
俺はコウのあの家を正式に買い取って、すばると二人の生活を始め。
何もかもが新鮮で、光に満ちていて。
この手にすばるが帰って来た事が、今だに信じられずにいた。
それをそのまま、すばるに伝える。
「だって、死んだって思ってたんだから」
「それは…ごめん」
すばるはベッドの上、俺の腕の中で小さく縮こまる様にして見せた。
細く引き締まった身体は、すっかり日焼けしている。すばるを助けた『じいちゃん』を手伝って、ずっと漁船で海に出ていたと言う。
「すばる。潮の香りがする…」
くんと鼻先をその首筋へ埋め、匂いを吸い込む。
「くすぐったいっ。なんか、犬みたいだって」
「いいだろ? 全部、ちゃんと覚えとかないと…」
「それに、俺シャワー浴びてるから潮の香りなんて──」
「するんだ。海、抱いてるみたい…」
「んだよ。それ」
照れたすばるの声。ぎゅっと抱きしめ、キスを落とした。
耳や耳の後ろ、首筋に鎖骨。
順々に辿って行く。既に一度ならず事は済んでいたのだが、一旦、始まると止められなくなる。
紅い痕が散るそこかしこに、当分水着だけにはなれないだろうな? と思った。
「な。もう、一回。…いい?」
「いいよ。何度だって」
照れ臭そうに笑うすばるに、ドキンと胸が高鳴る。
因みにまだ朝の十時過ぎ。
朝食だって食べてない。今日はもう、このまま、ダラダラとすばるとベッドで過ごすのだと思う。
なんて、幸せな時間だろう。
すばるの了解を得た俺は、またその身体に、熱に溺れて行く。
一つ、一つ。その反応を確かめながら、胸に刻んで行った。
俺だけの、すばる。
―了―
最初のコメントを投稿しよう!