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「あ、帰ってきた」
清が玄関を開けると、コウがリビングから先ほどと同じように顔を出した。
続いて三つの顔が次々と覗く。
「へぇ。あれが清の…」
長身の女性が顎に手をあて思案顔になる。その背後から、ベリーショートの金色の髪をふわふわさせながら。
「かわいいコ。結構タイプかも」
ニッと焼けた頬を緩ませると、長身の女性がパシりと金髪の後頭部を軽く叩いた。
「った! マジになんなって!」
「目がマジだった…」
「そこ、喧嘩しない。…もう、落ち着いた?」
鼻の上のメガネを押し上げつつ、柔らかい雰囲気の一番小柄な青年が声をかけてきた。
俺はかなり動揺しつつ。
「…えっと、大丈夫…です」
「おい、すばるが恐がってんだろ? アキ、マナ。あっち行け。湊介さん、そいつら押さえといて」
「ああ、うん。いいけど…。今さっき、進士来たよ? 今、シャワー浴びてるけど」
その言葉に清の肩がぴくりと揺れた。
「…さっき外で会った」
「何年ぶりかな?」
湊介は宙を見てどこか遠くを見る目付きになる。
「二年ぶり」
即答した清は俺の背を押すと。
「夕飯食べよ。コウ、もう出来てる?」
「おう。好きなだけ食っていいぞ。お手製カレーだ。それより今、進士が──」
「湊介さんから聞いたよ。なぁ、すばるの布団は?」
清は俺をテーブルにつかせると、用意されていた皿にご飯をよそい、カレーを盛り付ける。
「あぁ! それ、それ。進士が来ちまったからなぁ。来客用の布団、一対しかないんだよ。寝袋じゃ流石に…」
「それって、進士さんが寝袋だよね?」
俺の前へカレーの盛られた皿を置くと、じとりと清はコウを睨む。
「あぁ? てか、あいつ明日仕事だって言うしさ…。うーん、どうしよっか…」
俺はカレーにスプーンを差しつつ。
「あの! 俺、寝袋でいいですよ? 面白そうだし──」
「何、言ってんだよ。お前の方が早く来てたっての。先なんだからな!」
「清…」
清は乱暴にカレーを掬うと口に運んだ。
柄になくむきになる清に俺は困り果てる。清は大きくため息をついた後。
「いいよ…。分かった。すばる、俺のベッドで一緒に寝れば。平気だろ?」
「え?! って、同じベッド?」
「前は一緒に寝てただろ? コウ、布団は進士さんにやっといて」
「で、でもっ」
焦る俺を尻目に、カレーをサッサと口に運んで行く。これ以上、取り合わないと言った風情だ。俺も仕方なく食べることに専念した。
コウの作ったカレーは絶品だった。どうやらスパイスから全て混ぜて作っているらしい。コウが食べている最中、自慢してみせた。
「拘ってんだよね。それ。店にも出せそうだろ?」
「本当に! 美味しいです…」
俺が答えると、コウは満足気に頷いた。
「すばる君はかわいいね? 清なんか何時も仏頂面で、聞いたってうんともすんとも言わないんだからさ。っとに作り甲斐のない…」
「コウは自慢しすぎ。ウザいっての」
清は取り合わない。
そんなやり取りをしながら丁度食べ終わる頃、風呂から進士が上がってきた。
バスタオルで頭を拭きながら、キッチンの冷蔵庫を遠慮なく開け、缶ビールを一つ取り出してプルタブを開けると、一気に煽る。
コウから借りたのか、上下黒のスウェット姿だった。捲った腕が筋張っていて大人を感じさせる。
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