第3話 告白

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「あ、帰ってきた」  清が玄関を開けると、コウがリビングから先ほどと同じように顔を出した。  続いて三つの顔が次々と覗く。 「へぇ。あれが清の…」  長身の女性が顎に手をあて思案顔になる。その背後から、ベリーショートの金色の髪をふわふわさせながら。 「かわいいコ。結構タイプかも」  ニッと焼けた頬を緩ませると、長身の女性がパシりと金髪の後頭部を軽く叩いた。 「った! マジになんなって!」 「目がマジだった…」 「そこ、喧嘩しない。…もう、落ち着いた?」  鼻の上のメガネを押し上げつつ、柔らかい雰囲気の一番小柄な青年が声をかけてきた。  俺はかなり動揺しつつ。 「…えっと、大丈夫…です」 「おい、すばるが恐がってんだろ? アキ、マナ。あっち行け。湊介さん、そいつら押さえといて」 「ああ、うん。いいけど…。今さっき、進士来たよ? 今、シャワー浴びてるけど」  その言葉に清の肩がぴくりと揺れた。 「…さっき外で会った」 「何年ぶりかな?」  湊介は宙を見てどこか遠くを見る目付きになる。 「二年ぶり」  即答した清は俺の背を押すと。 「夕飯食べよ。コウ、もう出来てる?」 「おう。好きなだけ食っていいぞ。お手製カレーだ。それより今、進士が──」 「湊介さんから聞いたよ。なぁ、すばるの布団は?」  清は俺をテーブルにつかせると、用意されていた皿にご飯をよそい、カレーを盛り付ける。 「あぁ! それ、それ。進士が来ちまったからなぁ。来客用の布団、一対しかないんだよ。寝袋じゃ流石に…」 「それって、進士さんが寝袋だよね?」  俺の前へカレーの盛られた皿を置くと、じとりと清はコウを睨む。 「あぁ?  てか、あいつ明日仕事だって言うしさ…。うーん、どうしよっか…」  俺はカレーにスプーンを差しつつ。 「あの! 俺、寝袋でいいですよ? 面白そうだし──」 「何、言ってんだよ。お前の方が早く来てたっての。先なんだからな!」 「清…」  清は乱暴にカレーを掬うと口に運んだ。  柄になくむきになる清に俺は困り果てる。清は大きくため息をついた後。 「いいよ…。分かった。すばる、俺のベッドで一緒に寝れば。平気だろ?」 「え?! って、同じベッド?」 「前は一緒に寝てただろ? コウ、布団は進士さんにやっといて」 「で、でもっ」  焦る俺を尻目に、カレーをサッサと口に運んで行く。これ以上、取り合わないと言った風情だ。俺も仕方なく食べることに専念した。  コウの作ったカレーは絶品だった。どうやらスパイスから全て混ぜて作っているらしい。コウが食べている最中、自慢してみせた。 「拘ってんだよね。それ。店にも出せそうだろ?」 「本当に! 美味しいです…」  俺が答えると、コウは満足気に頷いた。 「すばる君はかわいいね? 清なんか何時も仏頂面で、聞いたってうんともすんとも言わないんだからさ。っとに作り甲斐のない…」 「コウは自慢しすぎ。ウザいっての」  清は取り合わない。  そんなやり取りをしながら丁度食べ終わる頃、風呂から進士が上がってきた。  バスタオルで頭を拭きながら、キッチンの冷蔵庫を遠慮なく開け、缶ビールを一つ取り出してプルタブを開けると、一気に煽る。  コウから借りたのか、上下黒のスウェット姿だった。捲った腕が筋張っていて大人を感じさせる。
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