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悪夢から目覚めるためには戦わなければならない。そして悪夢は現実の世界で実際化することを知った。僕は夢に見たように犠牲になることを恐れ,現実世界における悪夢の実際化を回避してきた。
だが逃げることはもうやめた。夢に見る恐怖にも,現実に起こる恐怖にも,立ちむかってみせる。度重なる試練の門を潜り抜けた先に空告が待っているような気がするからだ。15年前双子の兄は弟を助けるために駆けつけたが,弟は兄を身代わりにして1人だけ逃げた。その後兄は行方不明になった。
いつか必ず空告と再会するために悪夢の実際化する事件現場へやってきた――現実世界で悪夢と戦うはじめての試練だ。
しかし夢に見た銃の乱射事件は起きなかった。
事件で巻き添えになるはずの暴力団組長の娘,富士見紗架は忠告を受けながらも犠牲者たちを黙殺できず,身辺警護人の間部と現場に来ていた。動員された警官たちが撤収しようとするとき,僕のなかに新たな悪夢が舞いおり現実の歯車を動かしはじめた。
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