消えた女房役

1/1
前へ
/110ページ
次へ

消えた女房役

 それからのことは、オレはほとんど覚えていない。  断片的にしか、思い出せない。  いや、意図的に、その記憶を封印してしまったのかもしれない。  学校に帰って、勝利報告と甲子園出場のこと。  そして、翌日から甲子園初出場、初勝利を目指して、休む間もなく練習が再開されたこと。  そしてー。  一番大事なことを思い出さなければならなかった。  あの日、土で盛り上げられたマウンドが、沸騰するマグマの如く、熱く熱く強烈な熱エネルギーを放つ中で、オレに暑い厚い接吻をした女房役の連が、翌日からいなくなったことだ。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加