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藤堂の屋敷での一件以来、優介は何度も同じ夢を見ていた。隣に座り、はにかんだ笑顔を向けてくる想い人を、自らの手で汚すという悪夢。体を組み敷き欲望をぶつけると、瞳を潤ませ許してと懇願する。しかしそんな言葉とは裏腹に体は熱く熟れ、奥まで貫けば甘い声で鳴き、何度果ててもまだ足りないとでも言うように求めてくるのだ。その淫らな姿に興奮を覚えながら何度も腰を打ち付けているうちに、消え入りそうな声で名前を呼ばれて目が覚める。
あの日の夏生の嬌声が耳の奥にこびりついて離れない。夢から醒め、現実に戻った後も体はひどく熱を帯び、疼く下半身に手を伸ばして自分を慰めると、罪悪感と劣等感に苛まれる。いつもこの繰り返しだった。
(俺もあの人と同じだ…)
吐き出された欲望で汚れる手を見つめながら、優介は声を殺して泣いた。
あの日を境に、優介が藤堂の屋敷へ行くことはなくなった。
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