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「旦那様おかえりなさい」
「ただいま。優介はいるかい?」
「ええ、今日は仕上げ場の方に。呼んできましょうか?」
「…いや、それならいいんだ」
優一はそう言って深いため息をつく。
「どうかなさいましたか?」
「あー…ちょっと、ね。良くない噂を耳にしたもんだから」
再び深いため息をつくと、優一は部屋の奥へと歩いていった。
その日の晩、優一は夕餉を済ませたあと優介を部屋に呼び出した。
「どうしたの?改まって」
夕餉の時に顔を合わせているのだから、話があるならその時でも良い筈だ。それをわざわざ部屋に呼ぶということはそれなりの理由があるのだろうと、優介は少し身構えた。
「ああ、実は…お前がせっかく取り付けてくれた藤堂様との取り引きなんだが、近々断ろうと思ってね」
「え…?」
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