約束の彼方に

〈第3部〉第6話

夏生は今もあそこにいる。たった一人で。そうさせてしまったのは自分なのだと優介は唇を噛む。自分の気持ち一つ満足に伝えることができず、少しでもそばにいられればと思っていたのに、望まぬ現実から目を背けたくて逃げてしまった。夏生の支えになりたかった。だけど結局、自分勝手な都合で夏生を傷つけただけだと気づいた。

「もしかしてあの子、前にお前が話してた花街の子かい？ウチに連れてきてもいいか散々聞いてきたのに、ぱったり話をしなくなったもんだからどうしたのかと思っていたんだが…ひょっとして、お前があそこの屋敷に行かなくなったのは……まあ、野暮なこたぁ聞かないさ」

優一は何も言わない優介の心の内を察したのか、それ以上何も尋ねてこなかった。