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藤堂は焦っていた。秘密裏に行っていた新薬の裏取引が外部に漏れ、悪い噂が街中に広まっているからだ。無論そんな事実はないと否定しているのだが、お上に目を付けられている事は間違いない。取引の件を漏らしたのはおそらく、他ならぬ取引相手達であろう。まさかこんなに依存性が高く、厄介な薬だとは思ってもみなかった。
藤堂は今、自分の置かれた立場が危険である事を察知していた。もしこのまま状況が進展すれば自分は破滅する。そんな事は分かりきっている。だが、だからといってどうする事も出来なかった。
追い込まれた人間は、時に理解し難い行動を取る事がある。藤堂の場合、その対象になったのが『夏生』だった。
藤堂は毎日のように夏生を抱いた。自分に何の関心も示さなくなった夏生に薬で強制的に快楽を与え、気が狂うほど犯した。築き上げてきたものが日々失われていく中、まるで自分の所有物である事を誇示するように。
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