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ある日、藤堂は珍しく客人を連れてきた。もうしばらく屋敷に人が訪れてくることはなかった。あんなにたくさんいた使用人も、今では数えるほどしか残っていない。…そんな状況を、夏生は知る由もなかった。
連れてこられたのはまだ歳の若い男。切れ長の鋭い目が、夏生をじっと見つめている。
「夏生、今日はお前にとっておきの贈り物があるんだ」
藤堂はそう言って笑った。今まで見た中で一番不気味で、そして醜い笑顔だった。
「彼はね、文身師なんだ。まだ駆け出しなんだが腕は確かでね、きっとお前に相応しいものを描いてくれるだろう」
何を言っているのか分からなかったが、嫌な予感だけはひしひしと感じ取れた。男は黙って煙草を取り出し、おもむろに火をつける。煙を吐き出す唇には赤い口紅が塗られていて妙に艶かしい。男の視線は相変わらず夏生の体に向けられており、時折舌なめずりをしながら胸元や下腹部、足先まで舐め回すように見つめた。
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