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「旦那、決めましたぜ」
男が言った。
「そうかい。それじゃあ頼むよ」
藤堂の言葉を聞き終える前に、男は懐から小瓶と竹の棒を取り出した。棒の先端には針が何本も括りつけてあり、見ただけで夏生の背筋は凍りつく。
「動かねぇでくださいな」
男は静かに言うと、いきなり夏生の着物の裾を捲り上げて脚を開かせ、右の内腿をぐっと押さえつけると躊躇することなくそこへ針を突き刺した。鋭い痛みで悲鳴を上げ、夏生は苦痛から逃れようと必死に抵抗する。
「暴れると傷になっちまいやすぜ」
「おや、それはいけない。それに舌を噛んだら大変だ」
藤堂は箪笥から手縫いを取り出すと、素早く夏生の口に猿ぐつわを施した。
「……っ! んー!」
「大丈夫だよ夏生。すぐに終わる」
後ろから腕を拘束され耳元でそう囁かれると、程なくして再び針が突き立てられる感触があった。針は容赦なく肌へと食い込み、肉を引き裂きながら皮膚の奥へ奥へと進んでいく。焼けるような感覚とともに皮膚の内側に入り込んでくる異物感。気を失いそうなほどの激しい痛みに、大きく見開かれた夏生の目からは大粒の涙が零れた。
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