〈第1部〉第1話

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「ああ、夏生…夏生…」 名前を呼んで抱きしめる稔の腕は細く、力も弱々しい。最近まともな食事を摂れていないからだ。あんなにも眩しくて大きかった父はもうどこにもいなかった。 これが自分の役目なのだと自分自身に言い聞かせ、夏生は精一杯の笑顔を作って言葉を紡ぐ。 「父さん、俺は大丈夫だから」 何度も繰り返し謝る父の腕の中で、11歳の夏生は静かにその運命を受け入れた。
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