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帽子である。
猫の抜け毛を集めて成形して作る、猫用の帽子だ。
インスタグラムで、抜け毛の猫帽子を見た時、「私も作りたい!」と思ってしまったのだ。
ちなみに、猫ノ森図書館には、この猫帽子コレクションの本がある。①
たくさんの猫帽子が載っているので、見ているだけでも楽しい。
例えば、季節ものの「鏡餅」帽子。
建築物を模した「スカイツリー」帽子。
モニュメントの「太陽の塔」帽子。
マスコットキャラの「くいだおれ太郎」帽子などなど。
さすがにそんなに凝った帽子は作れそうにないが、まずは「魔法使いのとんがり帽子」と「王冠」にチャレンジしてみようと思っている。
なにより、猫の帽子作りは、猫も人間もメリット尽くしのwin-winだと思うのだ。
ブラッシングすることで猫の毛玉防止になるし、その抜け毛を再利用・有効活用して帽子が作れるなんて、まさに一石二鳥!なんてサステナブル!なんてSDGs!
…まぁ、その帽子を被って猫が喜んでくれるかどうかは「?」だけれども…。
そういうわけで、私は館内を歩き回って、見つけた猫たちにブラッシングをしていった。
抜け毛は、それぞれ誰の毛なのか付箋に名前を書いて、箱の仕切りごとに入れて集めていく。
今までにも何回かしているが、猫にブラッシングをかける度に、貯金のように抜け毛が増えていくのは楽しい。(抜け毛の収穫祭!)
「リーちゃん、ありがと」
ブラッシングを終えた猫にお礼を言うと、どういたしまして、というようにリーちゃんは喉をゴロゴロいわせた。
リーちゃんは、サバトラの女の子だ。
英国の作家、アリソン・アトリーにちなんだ名前なのだが、例によって私は勝手にリーちゃんと呼んでいる。
アメショ(アメリカンショートヘア)似の外見で、友好的で人懐こい。
他の猫にブラッシングしているのを見て、「ねぇねぇ、それ気持ちいいの?私にもやってやって!」という風に自分から志願してくれた子だ。
愛想もよく、なんとなく猫ノ森図書館のパティシエール、楓さんと似ているな、と思う。
「さてさて、次は…と」
大きな張出し窓の、出っ張り部分で寛いでいた桜桃梅と再び目が合う。
懲りずに、私がダメもとでブラシを見せると、「仕方ないなぁ、少しだけならいいよ」という風にゴロンと寝そべった。
近づいて、恐る恐る桜桃梅にブラッシングをかけてみる。
普段は抱っこはおろか、撫でさせてもくれないのに、ブラシ込みでも初めて触れることができたので、ドキドキしながらも感激してしまった。
桜桃梅は誰とでも気軽に気安く打ち解ける子ではないが、それは私も同じかもしれない。
だから、ちょっとでも私に心を許してくれたのだとしたら、とても嬉しい。
「帽子ができたら、一番最初に桜桃梅に見せて、被らせてあげるからね」
私の言葉に、桜桃梅は「好きにすれば?」というように片目を開けて、チラッと私を見たのだった。
蚯蚓出 [みみずいづる] 了
次回、竹笋生 [たけのこしょうず] に続く
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①『ねこ、かぶり』rojiman&umatan/著
2017年/刊 宝島社/出版
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