レッスン1 出会いと別れ

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レッスン1 出会いと別れ

 閑静な高級住宅街、そこに通じる駅近の小さな学習塾から、この物語は始まる。  私の名前は、安達伸一。駅近くのK大学に通う一回生だ。小遣い稼ぎに、バイトを探していたところ、この街で塾経営をしている叔父からの誘いで、塾講師として働くことになった。塾といっても大層な規模でもなく、マンツーマン指導をウリにした個別指導教室である。もともと、私は子供好きであり、大学でも教師を目指していたので、これは良い話しと軽く引き受けた次第である。 私は、いつもの様に教室に入り、塾長である叔父に挨拶を交わすと、他の学生講師たちと開校準備をはじめた。 「こんにちは。」 学校帰りの、小中高生たちの元気な挨拶が聞こえてくる。彼らは入口に貼られる座席表を確認し、各々自習室、教室に分かれていく。座席表には担当講師の名前が書かれており、塾生たちは、 「あっ!今日は町田先生だ。やったあ。」 と、自分の目当ての先生だと、歓喜の声を発したり、かたや一方では、 「わあ。佐藤先生やあ。ダル〜。」 落胆の声を上げる塾生など反応も様々である。
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