レッスン2 再会

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レッスン2 再会

 静香が私の元を去ってから10数年の月日が流れた。私は無事に大学を卒業し地元の男子高校教師として日々の仕事に追われていた。塾の方も、叔父が高齢で体調を崩してから、一切の経営を任され、今や私が塾長となっていた。高校の仕事が終われば塾へ移動の毎日を送っていた。  あれから、何人かの女性と付き合ってはみたが、どうしても私の性欲を満たしてくれる女性には出会う事が叶わず関係も長くは続かなかった。空虚な毎日を過ごしながらも、私は心のどこかで理想の女性を追い求めていた。 「さあ、そろそろ切り上げようか。」 私は塾長室で、高校の定期テストの採点作業をしていた。部屋の時計を見ると、もう夜中の0時近くになっていた。誰もいない教室を見回りし、ふと片隅の座席に目をやった。そこは、私と静香との最後の授業をした座席だった。 「先生大好き。さようなら。」 か細い悲しそうな声で告白をした妖精は、今どうしているだろうか。今まで忘れかけていた淡い恋の思い出が私の脳裏をよぎった。私は静香ときちんと別れの挨拶をしていなかった。 「願いが叶うなら、もう一度あの妖精に会いたい。」 世間ではもうすぐクリスマスである。この年齢でサンタクロースの存在を信じてはいないが、私は入口に飾りつけたクリスマスツリーを見ながら、叶いもしない願いを「絶対合格する。夢は諦めなければ叶う。」 と書かれた合格祈願札の裏に書きつけた。  
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