おにいちゃんと猫

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 水面の揺らめきの上に広がっている、あの虹色はきっと空だ。  橙色の空は見えなくなった。  地上にいるひとたちとは違う、海底にいる私たちだけが、美しい虹を見ているのだ。  手と手を絡め合って、波に揺蕩(たゆた)いながら沈んでいく。  瞳からあふれる透明な涙も、ふたり絡み合って、光の差すほうへ向かっていく。  私たちは沈んでいく。底の白砂にくっつくまで。  おにいちゃんが私を包み込むように、強く抱き締めてくれた。不思議と苦しくも怖くもなかった。  ゆっくりと(しら)んでぼやけていく世界で、大好きなあなたの唇にキスをする。  晴れ渡る青空にかかった虹のように、美しいあの世界で、あなたと愛し合うために。
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