バレンタインには好きな人にチョコレートを

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あたし海江田紬と彼有沢朝陽は彼氏彼女の関係です。 ただしそれは表向きの話で、だからと言って両思いってワケじゃないんです。 いえ、あたしは一方的に朝陽君のこと好きですよ? でも、朝陽君はあたしのこと好きでつきあってるんじゃないんです。 では、なぜ付き合っているのか? ことの発端は、もうずいぶん前のことになります。 朝陽君が湊川遥さんという、うちの学校一美人ともてはやされる人に振られたことにはじまります。 朝陽君は彼女のあたしがこう言ってはなんですが、はっきり言ってイケメンです。 切れ長の目が涼やかで、塩顔の男前なんです。 髪だってサラサラだし、成績だって優秀だし、背まで高いんです。 なのに、振られちゃったんです。 湊川さん年上の彼氏がいるって噂があるから、そのせいかな? 朝陽君が勇気を出して、湊川さんに告白したと思うんだけど、思いがけず振られちゃって、更にたまたま通りかかったあたしに、振られるシーンをバッチリ見られちゃったんです。 踏んだり蹴ったりですね。 湊川さんはさっさと帰ったので気付いてないみたいだったけど。 朝陽君はあたしに振られたことを誰にも言うなと口止めをしてきました。 恥ずかしかったんでしょうね。 誰にも言わないと約束したのですが、朝陽君は今まで顔見知り程度だったあたしのことをイマイチ信用できなかったみたいで、なんでも一つだけ言うことを聞くと言ってきました。 そんなことしなくても、言わないのにね。 でもまあ、折角だから勉強を教えてもらうことにしたのです。 丁度テスト前だったので。 なにしろ、朝陽君は学年で一二を争う優秀な生徒ですから。 ちなみにあたしは、真ん中から後ろ……とだけ言っておきましょう。 テストまでの1週間、放課後の教室で勉強をみてもらうことになりました。 テストはお陰様でそこそこいい感じに終わったんですが、別の問題が発生しました。 勉強してるところを見た誰かが誤解して、あっという間に噂になってしまったのです。 海江田紬と有沢朝陽がつきあってると。 あたしはもちろんちゃんと否定しましたが、朝陽君はこんなうわさどうでもよかったのかなんなのか、全然否定もしませんでした。 朝陽君が否定しないなら、まあ、いっか ってことで、あたしも気にしないことにしました。 それから、テスト勉強のおかげで赤点も取らずに済んだので、お礼にランチを奢ることになりました。 ランチになったのは朝陽君の提案です。 「何か欲しいものある?」と聞いたら、「腹減った」と答えたのです。 そこからなんとなく流れで、お礼のお礼でアイスクリームを奢ってもらったり、パパから貰った映画の券で映画を見に行ったり。 なんやかんやそんな風にしてる間に、二人が付き合ってる説が、「本当だ」みたいに言われるようになって…… クールでかっこよくて成績もいい朝陽君と成績もあまりよくないし、顔も平凡なあたしというアンバランスなカップルに対し、周りはなぜかものすごい盛り上がっちゃって、いつの間にか学校中公認のカップルになってしまったのです。 朝陽君は「否定するだけ無駄だし、もうつきあってるってことでいんじゃない?」なんて言ってます。 いったいどういうつもりでしょうか? 「つきあってる彼女がいるってわかれば寄ってくる女も減るし、どうせ本命には振られてるし。 お前もいいだろ?」 お前もいいだろ?って決めつけないでいただきたい。 残念なことにあたしには好きな人がいたのです。 ええ、そうですよ。 朝陽君のことですけどね。 もともと憧れてたんですよ。 だって、かっこいいんだもん。 こうやって近くにいると、いつの間にか本当の好きになっちゃってたんです。 だって、俺様に見えて言葉も少し足りないけど、根は優しいんです。 成績が良いのだって、頭が良いだけじゃなくて努力家なんです。 こう見えて甘党っていうカワイイところもあるんです。 惚れてまうやろ。 そうしてなんだかうやむやのまま、あたし達は彼氏彼女という関係になったのです。                                   
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