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──吾輩は猫である。名前はまだ無い。
なんて書き出しで始まる有名な小説が人間界にはありまして──まあ、私にはキャロルという名前が既にあるんですがね。
クリスマスイブに拾われたから、というなんともベタなあれではありますが、今大事なのは有名小説でも私の名前でも将又その由来でもなく、私の飼い主たちがこの度三年続いた同棲を解消し、別々の人生を歩むとのことで。これから先、誰が私の面倒を見るかという、まさに離婚の親権争いに直面した子供のような状況でございます。
ここだけの話、どちらに飼われるにせよ、私にはそこまで大した問題ではありません。どちらの飼い主も猫好きですし、黙っていてもご飯は出ます。暖かい寝床もございます。
ですので、しばし私は猫の分際ではありますが、狸寝入りでもして目の前の親権争いを傍観しようかと思っている所存です。
ちなみに、私の飼い主について少々申しておきますと、私を拾ったのは一人の書生ではなく、一組のカップルだったこと、そして彼らは雄同士なのです。
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