第一話 巨大人型兵器『サキガケ』の誕生秘話

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 時は2020年某日。  まだ『ハイぺリオル』もなく、新牙もパンドラも出会わず、『天国』もゼウスも現れず、ぶっちゃけて言うと『本編』が始まる前の話。  ここは、新宿。  日本でもっとも潤沢な軍事設備をもつ新宿大本営がある場所で、帝都東京、延いては天皇が住まう皇居の防衛を主任務とする軍事施設である。  そこに、一人の大天才がいる。  その名を天岡ソウイチ。  齢70を超える、日本帝国軍がほこる天才発明家にして、その元帥・王見帝舞の片腕の一人。  世界ではじめての小型携帯端末――俗にいう携帯電話を開発、いま現在ひろく出回っている『スマートフォン』・『リストデバイス』の開発にも深くかかわっている大天才である。    さらには、日本帝国がほこる武器や戦車、装甲車……あらゆる軍備も彼の手がくわわっており、時代を先取りした先進技術を以て軍の増強にも一役買っている、まさに大天才である(二回目。  機械工学、生体工学……果ては『しろもじゃ』名義でエロ漫画まで執筆するまさに大天才である(三回目。  だが、いつもブリーフで白衣姿とスリッパという、変質者みたいな恰好をしているのがたまにキズである。    そんな彼は、生来の人嫌いであるゆえか、その毎日を新宿大本営のなかだけで過ごし、発明したり、休んだり、開発したり、サボっだり、眠りこけたり、ネット掲示板を荒らしたりと、忙しくも平和な日々を過ごしていた。  だが、仮初の平和というのは長くは続かない。 「天岡博士! うちの軍にも巨大ロボット欲しい!」  王見帝舞。  まるで、欲しいおもちゃでも見つけた子供のように純粋無垢な笑顔をたたえた、43歳の髭のおっさん。  その男の来訪が、天岡の平和な日々に終わりを告げる。
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